Creative hub/大手アニメスタジオからITベンチャーへ 「クリエイターの伴走者」になるための異色アニメプロデューサーの決断

インタビュー

大手アニメスタジオからITベンチャーへ
「クリエイターの伴走者」になるための異色アニメプロデューサーの決断

2026.08.19

大手アニメスタジオからITベンチャーへ<br>「クリエイターの伴走者」になるための異色アニメプロデューサーの決断

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<翻訳者>として、日本のクリエイターを世界に送り出す

――foriioでは現在、高久さんはどのような役割を担っているのですか?

高久:アニメ制作を軸とした仕事がメインですが、異なる領域を繋ぐ仕事が多いです。3DCGと2D作画、日本と海外、クリエイターとクライアントもそうですが、今までクリエイティブ制作とは縁のない業界とクリエイティブを繋ぐことで、クリエイターが新たに活躍する場を作っていくこともやっています。領域を繋ぐためには、それぞれの立場を理解して、いわば「翻訳」をする場面も多いのです。

例えば日本のクリエイターは、たとえレジェンド級の方でも自分の価値を対価に反映させるのが苦手です。それは、日本ではそうした金額や契約交渉を行うこと自体、職人にとっては何か不純なものとして考えられ、発注する側にとってはそうした交渉をしてくるクリエイターのことを厄介だと考える企業風土が強いということもあるからかもしれません。欧米では、むしろ自分の価値をちゃんと市場価格としても主張するべきで、企業側もその声を聞き入れる土壌があります。

だから、今foriioで進んでいる海外案件の交渉などを通じて、「適正価格」を日本の現場にも浸透させ、クリエイター自身がグローバル市場で「戦う」ことができるような手助けになれば、という気持ちでプロジェクトを進めています。

――ずっと国内外を見てきた高久さんから見て、それほど日本と海外とで、クリエイティブの現場や商習慣は違いますか?

高久:結構違いすぎて、どこまでをお話しするべきかは迷いますが……わかりやすいのは、日本はある意味「作家主義」的で、例えば監督のビジョンをいかに再現するかが求められます。一方、海外は「共同制作」の意識が強く、監督は現場のクリエイターの考えやアイデアをいかに引き出せるかが問われ、クリエイターは独創的な、あるいは現場で手を動かす人間ならではの提案が求められ、それが評価に繋がります。

日本のクリエイターの多くは、言われたことを実行する勤勉さや遂行能力は非常に高いのですが、余計な意見やアイデアを出さないのが美德とされる傾向にあって、そうすると海外のプラットフォームやメーカーが求めるクリエイター像からは遠く「自分の考えがない」という風に見なされてしまうリスクがあります。それは非常にもったいないことですし、長い目で見た時に、一部の象徴的な作家だけが育って日本のクリエイティブの基盤という点では弱体化に繋がると思うんです。

今、アニメ業界において、すでにある作品をメディアミックス化するアレンジ能力に長けたクリエイターは多いけれど、ゼロイチで作品を立ち上げる力を持っている人が少ないという危機感が漂っている現状と、そのことは地続きだと思います。

――なるほど。一方で、日本のアニメは世界的にどんどん存在感を強めてもいるという現状もあります。

高久:同時に、今、世界中で「自分たちの国のアニメ」を作りたいというニーズも高まっています。

今後、日本のアニメスタイルが固有のものではなくなっていきます。だからこそ、日本のクリエイターも準備を進める必要がある。こうした世界的な流れの中で、まだ繋がっていないパーツを繋ぎ、物事を円滑に進める役割はさらに重要になってきています。

――水面下では、そのような動向になっているんですね。

高久:私はとにかく、現場で汗水流して物作りに邁進するクリエイターに、もっと報われてほしいとそれだけをずっと思い続けています。グローバル市場で戦うためには一人一人のクリエイターが武器を磨く必要があって、私はそこを橋渡しし、クリエイターがより主体的に活躍できる場を作りたいんです。foriioという自由なフィールドで、クリエイターと共に新しい価値を切り拓いていきたいなと。

チェコアニメが好きだとお話ししましたが、私が大きな影響を受けた、イジー・トルンカという作家の「手」という作品を、事あるごとに思い出すんです。チェコアニメに共通する、体制に対して表現で抗う姿や、主流から外れた場所でもがきながら発信される力強いメッセージに、私はずっと惹かれてきました。幼少期に住んでいた頃のチェコはまだ共産主義でしたが、草の根的なものからテレビなどを通した民主化運動が起こって、今のチェコがあります。

「メディアの力で世界が変わる瞬間」を目の当たりにした私は、アニメには、文字通り世界を変える力があるということを知っています。だから、日本のアニメの現場を支えるクリエイター、王道ではないかもしれないけれど尖った才能を持って埋れているクリエイターを支えたいと、今も強く思っています。

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