
藤本颯士
2022年度入社。Netflix配信作品の『T・Pぼん』で制作進行デビュー。現在は、制作進行チーフとしてAスタジオで『ガチアクタ』を制作中。

岡野志保
2022年度入社。制作進行として『文豪ストレイドッグス』に初めて参加。以降、4話のタイトルに参加し、Dスタジオで最年長の制作進行に。

久米恵紀
2022年度入社。『僕のヒーローアカデミア』や『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』に参加してきた。現在は、制作進行チーフとして活躍中。
Creative hub/アニメの礎となる「制作進行」という職能 ボンズ入社4年目の同期制作進行の語る大座談会
インタビュー
2025.10.29


2022年度入社。Netflix配信作品の『T・Pぼん』で制作進行デビュー。現在は、制作進行チーフとしてAスタジオで『ガチアクタ』を制作中。

2022年度入社。制作進行として『文豪ストレイドッグス』に初めて参加。以降、4話のタイトルに参加し、Dスタジオで最年長の制作進行に。

2022年度入社。『僕のヒーローアカデミア』や『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』に参加してきた。現在は、制作進行チーフとして活躍中。
スタジオごとに異なる個性と専門性を活かしながら、多彩な作品世界を生み出してきたアニメ制作会社・ボンズ。2025年現在は、『僕のヒーローアカデミア』FINAL SEASONや『ガチアクタ』を放送中だ。
今回は、そうした作品に携わり、制作の根幹を支える「制作進行」職に焦点を当て、ボンズ入社4年目(ボンズフィルムへ出向中)を迎えた藤本颯士氏、岡野志保氏、久米恵紀氏という同期3名による座談会を実施した。
現場での経験を重ねながら見えてきた課題意識や、チーム全体の円滑なコミュニケーションを構築し、作品の完成度を左右する制作進行のやりがいまで──若手が語る“制作現場のリアル”から、次代のアニメ制作を支える人材像を探る。

久米:久米恵紀です。ボンズのCスタジオに配属後、継続して『僕のヒーローアカデミア』の制作に携わり、現在で3シーズン目になります。今の役職としては、新人制作の指導・サポートも兼ねた制作進行チーフを務めています。他にも、『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』の制作をお手伝いさせていただきました。
岡野:岡野志保です。これまでボンズDスタジオ内で合計で4話ほどのタイトルを担当してきました。入社して最初に担当した作品が『文豪ストレイドッグス』で、直近では『黄泉のツガイ』に制作進行で携わってます。
藤本:藤本颯士です。入社以降、Aスタジオに所属しています。最初にNetflix配信作品の『T・Pぼん』で制作進行として携わったあと、現在は放送中の『ガチアクタ』に、制作進行チーフとして参加しています。
久米:制作進行の仕事は、担当する話数において、アニメーターへの発注や原画の回収、撮影班や仕上げ班との調整、ビデオ編集から納品まで、アニメが完成するまでに関わるすべての工程に携わりながら、各話ごとの全体のスケジュールを管理することです。いわば、「アニメ制作に関わるお互いのセクションを尊重できるように仲介する立場」ですね。
期日までに作品を完成させることが重要なので、制作進行一人ひとりで1日の過ごし方は全く異なります。ボンズはフレックスタイム制で、始業・終業の時刻がバラバラなので、どのように1日をスケジューリングするか自分で考えなければいけないし、作品の進行状況によって忙しさもかなり変動します。
ただ、おおまかに言えば絵コンテ〜原画の回収作業までが比較的落ち着いた閑散期、素材が揃ってから修正・納品までの期間が繁忙期に当たるイメージです。
久米:基本的に、制作進行にとって絵コンテが完成するまでは待機期間なので、できることはそれほど多くないんですよね。進行の業務のひとつに、アニメーターへ依頼するシーンを割り振る作業があるのですが、僕はそのための下調べに時間を使うことが多いです。あとは、アニメーターへの営業をかけたり、納品までの大まかなスケジュールを立てたりといった準備ですね。比較的スローペースで働ける時期なので、14時や15時ごろにゆっくり出社して、夜には帰るということもあります。
藤本:自分も大体、久米と同じようなスケジュールですかね。あとは作品の設定確認や、他作品の絵コンテチェック、それからリサーチやインプットに時間を使っている感覚です。
岡野:私も基本的には2人と同じです。アニメごとのスタッフ情報を調べて、新しいアニメーターさんや動画会社さんを探すことも多いです。納品が迫っていて忙しい他作品の制作進行をサポートすることもありますね。

「T・P ぼん」
久米:制作は各スタッフの稼働時間に合わせて作業を組む必要があるので、朝から晩までやらなければいけないことが山積みですね。朝9時に会社着、動画検査さんに原画の受け渡しを行ったあと、正午までに撮影さんへの素材入れ。夕方になると各セクションに渡した素材が戻ってくるので、カットごとの状況を整理して、次のセクションに送りきる頃には、大体夜遅くになります。
藤本:あとは、深夜まで作業が続くことが多いのは、ラッシュチェックの時期です。ラッシュチェックというのは映像ができたあと、主要スタッフ全員で映写室に集まってミスがないか確認していく工程になります。そこで作画ミスや撮影ミスを洗い出したあと、リテイクが必要なカットを作業者に戻す必要があるので、特にその時期が、制作の忙しさのピークですね。
久米:ラッシュチェックが終わったら、修正内容を全てリテイクカットごとに添付して、各作業者に送るところまでが業務になります。大体、その時期は0時近くまで作業してますね。こういうタスクがギチギチに詰まった日が1週間続くことも、ザラにあります。
岡野:アニメ1話につき大体300から400カット程度あるのですが、ラッシュ時はその素材を一気に追いかける必要があるので、そこが大変だな、と感じます。私は素材の回し忘れが一番怖いので、仕上げさんへの素材入れは23時以降にやるとか、忙しい時期は1日のルーティンをあらかじめ決めて動くようにしてます。
岡野:昔、素材の回し忘れを実際に起こしたことがあって。絶対にこの素材を今日中に渡そうと決めていたのに、机の下に入れっぱなしになっていて、深夜に気づいて「あぁー!!」みたいな。それ以降、忙しい時にも素材の送り忘れが発生しないよう、自分なりの仕組みを作ることにしてます。
久米:ラッシュチェックで発覚したミスの中には、制作のせいで不備が起きている時もあって。その時は映写室で、非常に気まずい空気が流れますね。
藤本:だから僕は、ラッシュチェック時は処刑台に登るような気分になる……(笑)。
岡野:それでも、ラッシュチェックの時期は素材に色がついて、アニメーションとして動いている映像を初めて観れるタイミングでもあるので、私は好きですけどね。もちろん、ラッシュの時に初めて「あれ? 思ってるのと違うぞ?」と気付くことも多いんですけど。
