
3DCGの転換期に、がむしゃらに働いて叩き上げられたプロデューサー経験
――『プーさんといっしょ』もそうですが、やはり海外案件に多く関わられていたんですね。
高久:結果としてはそうですね。ポリゴン・ピクチュアズでは『トロン:ライジング』や『超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』といった海外案件も多く経験しました。海外クライアントと国内の現場を繋ぐ中で、品質とコストのギリギリを攻める調整能力を叩き込まれましたね。
その後、私の敬愛するリンドグレーン原作の『山賊の娘ローニャ』を宮崎吾朗監督のもと、ポリゴン・ピクチュアズで制作するということが決まったんです。
元々リンドグレーンの映像プロジェクトをやりたいという思いがあって、NEP時代からずっと企画を出し続けていたんですけど全然通らなくて。それが、巡り巡ってリンドグレーンの方からやってきたので、何がなんでも絶対にやりたい、と。でもその時、私は別作品に参加しないといけない状況だったので会社からは相当渋られて、それなら社員を辞めて、業務委託として『山賊の娘ローニャ』に参加させてほしいと直談判したくらいでした(笑)。
そこまで熱意があるならということで、別のプロジェクトをメインにしつつ『山賊の娘ローニャ』にも参加していたのですが、早い段階で前任の制作プロデューサーが倒れてしまい、最終的には私がお金と現場の責任を持つ「ラインプロデューサー」として奔走することになりました(『山賊の娘ローニャ』は2014-2015年にかけて放送)。
――その後、転職されたのはどのような経緯だったのでしょうか?
高久:『山賊の娘ローニャ』の後に担当したのが、『亜人』のTVシリーズと劇場版でした。本当に目まぐるしい日々の中で立ち向かってきた大規模プロジェクトが落ち着いたのが2016年のことで、私としてはもう少し落ち着いて小規模な作品に関わりたいと考えて、10GAUGEという小さな制作会社に転職しました。
そこではポリゴン・ピクチュアズ以上の激務が待っていたものの、限られた時間の中で、最高にクリエイティブなものを作りたいという熱意に突き動かされている職場でした。そこでメーカー各社の方々と直接やり取りする機会も多く、人脈が大きく広がっていったので私にとっては貴重な経験でした。ただ、4年後のコロナ禍に家庭の事情もあって、フリーランスでNetflixの『ラブ、デス&ロボット』の「死者の声」などに携わった後、東映アニメーションに入社しました。
――アニメ業界の老舗であり、大手企業ですね。
高久:そうなんです。東映アニメーションは大手企業ならではの待遇と環境の良さでした。ただ私自身の心持ちとして、業界全体で現場クリエイターたちがそれほど高くない単価で働いていることを知っていたので、自分の状況に次第に違和感を抱くようになりました。自分たちの身を守るために交渉する余裕も経験も持っていないクリエイターが多いのも事実で、そういった面はもっと改善の余地がある。だから、もっと現場に近いところで、個人のクリエイターを支援したいと考えるようになったんです。
クリエイターと伴走する道を
――ご自身のキャリアを通して、高久さんは、メーカーやスタジオではなく、クリエイター側に立ちたいという自分自身のスタンスを確かめていったということですね。
高久: そんなカッコいいものでもないですけどね……!
東映アニメーション時代に、余暇を使って、画材などで絵を描く有料講座などをたくさん受講した経験も大きかったです。その時代もやはりアニメ制作における3DCGというものの課題を感じていて。「どうして視聴者は3DCGに違和感を覚えるのだろうか?」という点を突き詰める中で、一つにはやはり質感というものがあると思っていて、アナログで絵を描くことを学ぶことで何かその糸口が見つからないだろうかという期待もありました。
――何か糸口はあったんでしょうか?
高久:実際には、3DCGに関するヒントもありましたがどちらかと言うと絵を描くこと自体の面白さに自分がどんどんハマっていったんですよね(笑)。別にうまくなったということではなくて、絵というのは私がそれまで考えていたよりももっと自由なもので、絵を描くことには、巧拙や型から解き放たれた純粋な喜びがあるということに気付いたんです。自分が絵を描けないことがコンプレックスでもあったので、その感覚が自分にとってはすごい新鮮でした
それで、自分自身のキャリアももっと自由にゼロから考えたいとも思い始めて、東映アニメーションを離れて、またフリーランスで仕事をしながらも、異業種を含めて自分の考え方に合う職場を探すということをしていました。
foriioを見つけたのも本当に偶然でしたが、ここしかないという、大袈裟に言うと運命的なものを感じました。徹底的に、クリエイター個人の側に立つというforiioの理念に強く共感したんです。今は結果的にforiioでアニメ事業が動き出していますが、元々はそういうつもりだったわけではなく、あくまでクリエイターと向き合うサービスに携わりたいと思って応募して今に至ります。
――どうして高久さんはアニメ業界でのキャリアを引っ提げてあえてforiioで活動されているのだろうと不思議ではあったのですが、すごく腑に落ちました。
高久:お話ししてきた通り、私は昔からどこに行っても主流から外れた人間で、王道を歩いてきたわけではありませんでした。そういう私だから、ある程度歴史が積み重なって商習慣や考え方が固定化しつつあるアニメ業界の、ど真ん中ではなく脇道からクリエイターと並走するということができるのかもしれないとは思っています。国内外のコンテンツホルダーの橋渡しをしながらアニメの制作というキャリアを、アニメ業界のど真ん中ではなく、foriioのようなテック業界からのアプローチに活かせているのかなと。
アニメスタジオにいると、アニメ制作が当然業務の中心になってきます。だから、私がもっと現場やクリエイターのためにこういうことをやりたいというアイデアを思い付いても、なかなか受け入れてもらえないということもよくありました。その点、結果はちゃんと出さなければなりませんが、foriioはとても自由で、それが会社の理念に沿うものであればなんでもやってみようという社風なので、私にはすごくあっているんですよね。





