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インタビュー

なんでも面白がる、〆切は絶対に守る『ガッチャマン』から『ガンダム』まで、メカニックデザイナー・大河原邦男のポートフォリオ

2026.05.20

なんでも面白がる、〆切は絶対に守る『ガッチャマン』から『ガンダム』まで、メカニックデザイナー・大河原邦男のポートフォリオ

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「大河原邦男のポートフォリオ」として選んだ4作品とは?

──数え切れないほどのデザインをされてきている大河原さんですが、もしもご自身でポートフォリオを作るとして、そこに載せる代表作を4つ選ぶとしたら何を選びますか?

大河原邦男:タツノコの作品から『ガッチャマン』と『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』、サンライズから『機動戦士ガンダム』と『装甲騎兵ボトムズ』。4本ということだと、これらの作品になると思います。

──納得の4本ですね。キャリアのスタートになった『ガッチャマン』については先ほどおうかがいしましたが、『ヤッターマン』についてはいかがでしょうか。劇中に登場するヤッターアンコウ以降のヤッターメカ(ヤッターワン、ペリカンまでは中村光毅氏)や、敵側のドロンボー一味のメカなど、ほぼすべて大河原さんの担当だったとのことですが。

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大河原邦男:『ヤッターマン』も108話あるんですが、それまでこの作品に出てくるような柔らかくてコミカルなメカのデザインってやったことがなかったんです。でも、108話もやってる間に大体「こうやればいいのか」ということがわかってくる。シリアスな『ガッチャマン』とコミカルな『ヤッターマン』を両方やったことで、大体どんな作品にも対応できるようになりましたし、それ以降の仕事は大体全部その応用です。

──なるほど。その後の『ガンダム』は、間違いなく大河原さんの代表作のひとつですね。

大河原邦男:『ガンダム』も始まりとしては、オモチャの企画でした。それ以前にサンライズが作った『無敵鋼人ダイターン3』では、変形のモックアップ(模型)を全部作って、スポンサーのオモチャ屋さんにプレゼンしてOKをもらって、商品化の大枠が決まってからアニメ制作に入りました。当時の子ども向けロボットアニメというのはスポンサーが大体オモチャ屋さんだったから、そういう順序で制作が進んだんですね。ただ当時はまだ合体・変形のギミックに関してはある程度自由で、提案すれば大体OKがもらえました。だから『ガンダム』の頃はアニメ制作会社の方が主導権を持っていたんですけど、だんだん時代と共に逆転してきて、今はもうスポンサーの方針でがんじがらめという状態なので、デザイナーとしての関わり方も違います。

──なるほど。『ガンダム』は玩具企画として、コアファイター(モビルスーツの核となる、小型可変戦闘機)を中心に、上半身と下半身を入れ替えるというギミックありきでデザインを大河原さんが提案したという話は有名ですね。

大河原邦男:そうですね。『無敵超人ザンボット3』『ダイターン』『ガンダム』はお客さんの層が同じだと思って作っていました。だから、どの作品でも、ロボットの中の小型メカを中心にしていて、『ガンダム』でも上半身と下半身を入れ替えて子どもたちが遊ぶ、というギミックでスポンサーを納得させたんです。ただ、劇中でそういうシーンはほとんどなかったですね。『ガンダム』は富野喜幸(現・富野由悠季)監督が「3本目の企画だし、自分が作りたいものを作りたい」と言っていた作品でしたから。スポンサーの方はイライラしていたと思います(笑)。

──『ガンダム』については、ここまでのヒット作になると思っていましたか?

大河原邦男:思ってないですよ(笑)。バンダイさんだって、『ガンダム』をプラモデルとして商品化したのも1979年の放送開始から1年以上経ってからだったし(バンダイによるガンプラ第1弾「ベストメカコレクションシリーズNo.4 1/144 RX-78 ガンダム」の発売は、1980年7月)。「MSV(モビルスーツバリエーション)」というメカニックデザインの企画にしても、「放送は終わっちゃったんだから、じゃあ遊んでもいいよな」ということで、安井尚志さんという編集者が講談社の方で展開してみようということで始まったものですから(1981年4月に講談社から発売された『劇場版 機動戦士ガンダム アニメグラフブック』に掲載された大河原氏描き下ろしの「VARIATION OF MOBILE SUITS ZAK」が、のちのMSVの先駆けとなった)。当時からすれば意外でしたが、『ガンダム』は工業大学の学生さんや、高年齢の人が支持してくれたんですね。

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──参加しているクリエイターから見ても、ここまで大きなタイトルになるとは思っていなかった作品だったと。では、『ボトムズ』についてはいかがでしょうか?

大河原邦男:『ボトムズ』の前に『太陽の牙ダグラム』という作品のメカをデザインしているんですが、『ダグラム』に出てくるコンバットアーマーというロボットが10m弱なんです。でも、アニメでは格好よく見せるために下から見上げる演出になるんですね。それだと結局画面の中では、18mほどもあるガンダムと同じくらいに見えてしまうので、どうしたものかなと思っていました。『ダグラム』を3話くらい観ながら「次の作品をやるとしたら、『ガンダム』『ダグラム』と同じにならずに済むものを」と考えながらモックアップを作っていたんです。結局、『ダグラム』が1年半続いてしまったので、なかなか日の目を見ることがありませんでしたが。

──『ダグラム』は大長編でしたからね。『ボトムズ』の主人公が搭乗する機体・スコープドッグは、どうやって作ったものなんでしょうか?

大河原邦男:当時ミクロマンというオモチャが売っていたんです。大体1/20スケールくらいの人形で各部の関節が動くから、それをパイロットに見立てて「パイロットと兵器の対比はこれくらいになるな」というのを測りながらデザインしました。私はこれまで100本以上のアニメに関わっていますが、本当に自分から「こういうものをやりたい」とモックアップも作ってプレゼンしたのは、『ボトムズ』だけです。

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──『ボトムズ』は気合いが違ったんですね。

大河原邦男:それはもう違いましたね。あの時は「AT(アーマードトルーパー)」というロボット兵器の概念を理解してもらうために、ラフをいっぱい作りました。それを見せながら高橋良輔監督に「ATってこういうもので、スコープドッグの他にもこういう機体があるんですよ」ってラフを次々出していったら、それだけで本編に登場する機体が足りてしまって、本編ではそれ以上新しいATを作るチャンスがなくなってしまった。OVAを作る時にようやく追加のアイデアを消化できたんです。

──大河原さんの作家性・クリエイティビティが一番強く出ているのが、『ボトムズ』なんですね。